頑 張 り に 諦 め 少 し 合 歓 の 花

がんばりに あきらめすこし ねむのはな

がむしゃらとか、何がなんでもという拳を突き上げるような気合いとは縁を切りました。
年齢のせいもあるのでしょう。
自分というものが見えてきた感があります。
やれば出来るなんて言葉はまやかしです。
人にはそれぞれ持って生まれた性格や能力があります。
そこを見据えていかないと、がむしゃらな無理は時間の無駄だし、心を傷つけます。

いい例がわたしの妹とその子どもです。
妹の夫は、親が小児科の開業医で、彼は妹と結婚し、一人息子をもうけました。
妹の夫は、人柄はすこぶるいいのですが、学力の点では、父親に遠く及ばず、当時開校したばかりの私立の歯科大に入学しました。
開校当初から、この大学は新聞沙汰でした。
寄付金が払えないことを理由に、入学試験の一位と二位を不合格にしたことが世間に知れて、ひと悶着起こしました。
妹の夫は、入学金と授業料の他に、よく言えば寄付金、ホントのことを言えば、裏口入学金を三千万、別に積み、入学しました。
卒業し、歯科医師の国家試験に無事合格したのですが、そのときも新聞沙汰でした。
一週間、その大学の受験生を全員、グランドホテルに缶詰めにし、勉強させるのならいざ知らず、国家試験の問題と答えを、丸ごと教えたというのです。
開業当初は順調で、羽振りもよく、妹は過去を忘れ、育ちのいいマダム然と化し、ものの言い方も発声法も皇室方式を真似て、変化しました。

いろいろと話が聞こえてくるにつれ、親が医師で、子どもが、志叶わず私立の歯科大というケースは意外とあるようで、歯科医師である本人はみんな一様に、医師に対して、恐ろしいほどのコンプレックスを抱え、これもまた一様に、子どもでリベンジを企むようなのです。
もちろんみんながみんなではないでしょうが。

妹は一人息子を、松山の中高一貫の受験校に入れましたが、親の思うようにはいかなかったようで、卒業後、更に二浪させて、地元の私立大学の医学部に入れました。
表から入ったのか、もしくは裏口が、今の時代でも一部開いているのかわかりませんが。
本人が自分から行きたがったと、妹は言うのですが、親が誘導したに決まっています。
そして留年。
もし学力不足で、お金の力で無理やり入学したのなら、卒業も国家試験も、どれほどの苦痛とストレスをもたらすものか、想像するだけで恐ろしいことです。
頑張れば、なんでも成就するものではないと思うのです。
早い段階で、見切りをつけたり、あきらめて方向転換するのも大人の選択です。