ゴ ッ ホ 描 く 狂 病 院 の 秋 の 花

ずいぶん前になるかと思う。
ゴッホ展を見に行った。
天才だと思っていたが、確かに、計り知れない才能があったことは確かだろうけれど、これほど努力の人とは知らなかった。
描き直し描き直して、カンバスや絵の具は、とても高価な物のようで、上描き上描きを重ねていた。
確かに世間で言うように、精神を患っていたのだろう。
病院の庭を描いた作品がある。
有名ではないが、わたしはこの絵にとても心惹かれて、たった一枚だけど絵葉書を求めて、小さな額に入れて、ベッドの横に置いている。
わたしの実家の近くには、昔からの精神病院があって、玄関ではなく、いちばん奥に通じる砂利道で、わたしは自転車の練習をしていた。
小学四年の頃。
今でこそ、子供は子供用自転車に乗るが、あのころは大人用で練習するのが当たり前だった。
砂利道にハンドルを取られて、練習は思うに任せず、かなり時間を要した。
当時精神病院は、見せたくないものを奥に奥に持っていくところがあって、わたしが見るのは、いちばん奥、打ちっ放しのコンクリートの壁に鉄格子。
ガラスが割れたところもあって、そのまま放置されていた。
庭なんてあろうはずもなく、空き地にはセイタカアワダチソウみたいな、根の張った雑草がはびこり、きれいにしようとする気配さえなかった。
ゴッホが長く入院していたのは、もっと昔のこと。
外国のこととはいえ、精神疾患に理解のある時代ではなかったろう。
病院の庭は、荒れていたと、わたしは勝手に想像する。
画家の目を通せば、それが自然の花野にも変わったのだろうか。
花の咲いた樹々。
背の高い草や、小さな色とりどりの花が配されて、まるで椅子を置いて、本を読んだり、おしゃべりしたくなる雰囲気に仕上がっている。
まったく現実と違うことが、容易に想像されて、とても哀しい気持ちになる。

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