あ の 頃 は よ か っ た と 母 春 深 し

あのころは よかったとはは はるふかし

むかしを振り返ってもしょうがないことなんだけれど、お父さんが元気で、家族はそれぞれに忙しく、また来客も多くて。

ようやく手に入れた自分の家に人を呼ぶことが楽しみだったあのころがよかったと。

この年寄りの繰り言を、わたしは半分しか聞いていない。

泊まり客も多く、夜中までおさんどんさせられて、ずいぶんイヤなこともガマンを強いられた。

あのころの、デパートの配送は、留守だとご近所に預けていたものだから、公務員の父はそれを用心して、継母と実の子が里帰りしている間、家に居ることを強要された。

その配送品を受け取るだけのために。

よく「バチが当たる」というけれど、あの人らには当たらない。

まったく神さまは不公平。

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