おにはそと おいだしたはず いつのまに
「鬼は外、福はうち」正式には「鬼やらい」「追儺(ついな)」と呼んで、立春の前夜、悪魔を追い払い、福を呼ぶ神事です。
むかしは、炒った大豆を、年の数だけ食べ、立ち上がって、外へ向けて投げつけながら「鬼は外福は内」部屋の四隅までお祓いして回る愉快な行事でした。
小学校でも、講堂と呼ばれた体育館で、学年いっしょに豆をまいたものでした。
ただ今と違うのは、ダイズはそのまま、フクロにも入っておらず、はだかのダイズ、上靴のまま、拾ってそのまま口に入れることを誰一人先生も児童も、不潔ともなんとも思わずせっせと食べたことです。
家に不幸を招き入れると言われる鬼は、豆攻撃に、アタマを抱えて、ほうほうのていで逃げ出すようすをよく見るのですが、したたか者の鬼が、大げさに逃げまどうのが、いかにもわざとらしく、そんなはずはないと思うのです。
きっとウラで舌を出して笑っているにちがいない。
みんなが寝静まった頃、床下や排水口から、何食わぬ顔で戻って来ると思われます。
あんなことで、効果があるなら、人生に苦労などあるわけはないからです。