母 が 居 た 郷 口 町 の 犬 ふ ぐ り

ははがいた ごうぐちまちの いぬふぐり

筥崎に、郷口町という地名の町がありました。

おそらく今は変更されているのではと、想像します。

宇美川と、もう一つ細い川の合流地点にあたり、狭い狭いところに、

これもまたとっても狭い官舎が、少し離れて2軒だけ。

川は、護岸工事もされてなくて、自由な遊び場。

いろんな雑草の宝庫で、中でもワタシは、青いこんぺいとうのように見えた、イヌフグリの花が好きで、摘もうとすると、必ず指先から逃げる、思うようにならない花でした。

まだ、幼稚園にも上がらない齢で、こんなにもはっきりと覚えているのは、

母がいたからだと確信します。

短い間で、そのあとすぐに、父と、その不倫相手に、追い出された格好で、泣く泣く出ていきました。

「血は水よりも濃い」

そこからは、幼くして、被虐待児となってしまって、ワタシの人生は

奈落に落ちるごとく、辛いものになりました。

ですから、郷口町の短い思い出は、胸の奥の宝石なのです。

毎年、犬ふぐりの季節になると、思い出します。

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