まつられし きつねひゃくのめ おみとおし
一般には見つけにくい細道の奥の祠、別に大きくもないのだけれど、その中に薄暗い灯明が、小さな小さなキツネを映し出します。
とても小さくて、ゆうに百匹は居ると思うのです。
その二つずつの、細くて吊り上がった意地の悪い、なんでも見抜いてしまう目が、こっちを見ているのです。
空恐ろしい気がして、早々に退散。
人間のウソくらい、カンタンに見破るのではないか。
本人が気がついていないことまでも。
キツネにまつわる不思議な話があって、ごく一般の田舎の屋敷の敷地の中に、古墳が祀られていたそうなのです。
そのむかしは、庄屋として、その辺りをまとめていた家らしいのですが、それほど格が高いということはなかったと聞きました。
ある夜、その古墳を壊して、次男か三男かの家を建てる話し合いが行なわれたとか。
その夜は、一晩中キツネの鳴き声が絶えなかったと。
それっきり建築の話は立ち消えになったとのことです。
その夜以来、キツネが鳴くことはないと聞きます。