バクチうち めのいろかわり いのしかちょう
小学校の低学年のころ、世間はそれなりに景気が良く、キャバレーと呼ばれるところには、キレイなドレスのおねえさんがいて、クリスマスともなれば、サラリーマンはキラキラの三角帽子をかぶり、ちゃらちゃらしたレイを首に掛けおおいに酔っ払って帰還したものです。
そんなときです。
わたしが花札を手に入れたのは。
父がどこかでもらってきたのでしょう。
壺振りのツボとサイコロもセットでした。
その日から、明けても暮れても花札です。
すっかり覚えはしたものの、ある日いつもの場所にないのです。
親が、わたしの、あまりの熱の入れように恐れをなしたか、隠したのです。
血まなこになって探したものの、見つかりませんでした。
江波杏子や藤純子の任侠シリーズを見て、サイコロ振りもやってみたのですが、意味がわからなくて。
ただカッコウだけは立派にできるようになりました。
「ようござんすか」「ようござんすね」「入ります」
イカサマを見つけると、アタマからすばやくかんざしを抜いて、イカサマをしているその瞬間の相手の手に投げつけ、グサリと刺します。
震えるほどカッコいいのです。