子どもの頃は、かき氷が上等のおやつだった。
「 氷 」と書いた暖簾をくぐり、席に座り、どれにするか自分で決めるのだけれど、そこはどうしても連れて来てくれた人の財布の具合によるところが大きくて、ただオレンジや赤や緑色のシロップをかけたものになることが多い。
それぞれに蜜柑、桃、メロンと付いているけれど、食べれば舌に色が付いて、妹たちとベーをして見せ合ったものである。
たまには上等の時もある。
「 宇治ミルク金時 」一番下に甘いあずき、氷の上から雪のようなミルクのシロップ。
これが、この店の特級品。
人間、あまり冷たいものを続けて食べると、こめかみがじんじんしてくる。
ましてや子ども。
だけど、まだ小豆は顔を見せない。
途中で投げ出すなんてことは、念頭にない。
店の 中もよく冷えている気がする。
最後の方は、甘くて美味しいのだけれど、半ば義務感のようになってしまって、食べ終わるとほっとする。
店を出れば、むっとするほどの暑さ、さっきまでは天国だったなんて思う。
今の子どもは、ソフトクリームを途中で捨てたりする。
そんなこと、いまだにできない。
クリームはもちろん、下のコーンのところを、どのくらいまでかじるのが許されるものか、ちらちら周りを伺いながら、世間の常識を探っている。