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「 累犯障害者 」 ( 2 )

最新の統計結果によると、新受刑者総数 3万2090名のうち、7172名
全体の22パーセントが、知能指数69以下。
測定不能者1687名。
これを加えると、実に3割弱の受刑者が知的障害者として認定されるレベルの人たちである。
簡単なたし算ひき算もできない人が、寮内工場だけでなく、一般工場の中にもいるのが実態だという。

知的障害者のほとんどは見かけが健常者と変わらないがゆえに、その障害を理解されにくい。

福田はどうして火をつけてしまったのか。
「刑務所に戻りたかったら、食い逃げとか泥棒とか、他にあるだろう。」
「ダメダメ。食い逃げとか泥棒とか、そんな悪いことはできん」
「じゃあ、放火は悪いことじゃない?」
「悪いこと・・・」
「でも、火をつけると、刑務所に戻れるけん」
放火 = 刑務所 が、頭に刷り込まれている。
もし、最初の懲役刑が、他の犯罪だったら、それと同じ犯罪を延々と繰り返していたかもしれない。

とにかく事件当日は、空腹と寒さから、一刻も早く住み慣れた場所に戻りたかった。
今回だけではない。
前回は、出所から6日目、火をつけてすぐ自首している。
55才以降の5回の放火のうち、4回は、放火後すぐに自首している。

福田の場合、快感を得るためのような愉快犯的な要素は 無いように思われる。
ただひとつ、社会の中に居場所がありさえすればよかった。

福岡刑務所の先生に、「セーカツホゴ」を教えてもらい、役所に行ったが、住所がないとダメと相手にされなかった。
「住むところがない」と何度も訴えたという。
一枚の切符を渡され、追い返された。
それが、下関駅 までの切符だった。
区の職員が、まともな対応をしていたならば、少なくとも下関駅が消失することはなかったろう。

生い立ち
福田は少年時代、父親からの凄まじい虐待を受けている。
身体中、傷痕だらけ。特に胸部からふくぶにかけての全面に広がるやけどの痕は酷いという。
何度も何度も、燃え盛るまきを押し付けられたという。
生い立ちからすると、始めに入った少年教護院は避難所だった。

福田は警察の取調べの際、「はじめから計画的に、駅全体を燃やすつもりで火をつけた」と供述している。
たぶん、誘導尋問に乗ってしまった。
相当長期の実刑判決が予想される。

刑務所にいることがわからない受刑者
いま、自分が何処にいて、何をしているのかすら全く理解していない障害者も受刑者の中にいる。
「この人たちは、いったいどんな裁判を受けてきたのか」刑務官たちは首を傾げる。
それ以上に、警察や検察の取調べがどのように行われたのか。

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