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「 残 穢 」 ざんえ 小野不由美 新潮社 ( 1 )

小野不由美「残穢」

残穢

あるホラー作家が、現実に遭遇した不可思議な現象の、大きな繋がりを語ったもの。
主人公は、久保さん。
仕事は作家。
ライトノベル。
ホラー系は得意分野で、本のあとがきに、何か不思議な経験をしたら教えてほしいと書くようにしていて、たまに読者から、その方面のメッセージを受け取ることもあるという。
2001.11独身の久保さんは、新しい賃貸の小さなマンションに引っ越してきた。
翌月には、部屋も荷物も片付き、新しい生活が本格的に始まった。

取材したテープなど資料を整理するのは、どうしても夜中になる。
畳の表面を何かが擦るような音を何度も聞いた。
当然振り返っても誰もいない。
真っ暗な和室で、いるはずのない誰かが力なく箒を動かしているイメージ。

前に書いたが、読者に呼びかけた「怖い話」の封書の中に、なんと同じ建物のちがう階の人がいた。
依田さん。一児の母。
2歳になる娘の様子がおかしい。
よく、何もない宙を見つめている。
聞くと「ぶらんこ」と言う。
依田さんは、さーっと何かが床を掃くような音を耳にするという。

依田さんと久保さんが聞いた音は同じものなのか。
なぜ、違う部屋で?
久保さんは、あるとき背後の暗がりに、帯のようなものを見たという。
いろいろ見て確認したところ、一番似ていると言って示したのは、金襴の袋帯。
いわゆる「金襴緞子の帯」
これは主に祝儀に使う。
つまりハレの場で締める帯だ。
普通は、二重太鼓に結ぶ。
帯はふつう4mほどある。

自殺者がいないか、ここは徹底的に調べた。
不動産屋はもちろん、同じ区画の、となりの区画に建つ一般の住宅まで。
自殺などはなかったが、あまりにも滞在の期間が短い家が何軒もあった。
ひどいところでは、2ヶ月。

自殺などの事故物件、過去に火災や水災、神社や墓地の跡地だったなどの心理的瑕疵については、今法律はとてもうるさい。
その一方で、過去に事故があったが、その建物は取り壊され、のちに新築された物件は、瑕疵に該当しないという。
住人が居つかない部屋というのは、全国に、なぜか確かにあるという。
子どもが同学年ということでもなければ、短い期間で引っ越していった人の消息はつかめない。
人に言うと、一種の見間違え、仏教では「虚妄」
迷いから起こる現象。
思い込み、先入観、煩悩の状態や姿をいう。

以前にこのマンションの住人だった人と、家電量販店で会ったという人がおり、つまり彼は、その店が勤務先だったのだが、辿り着いたときには、すでに退職していた。
同僚などのツテを頼り、転居先を探し当てたところ、首を吊ってなくなっていた。
27歳、独身。
偶然だろうが、久保さんがあの帯の擦れる音を聞きだした頃。
朝が弱いので、職場近くに引っ越すことにしたとのことだった。
しばらくして、転居先の大家は、彼から、「このアパートに、赤ん坊はいるか」と聞かれている。
それも、何度も念をおして。
「本当に新築なのか?前住者はいないのか?」
何度も尋ねたという。
ひょっとしたら彼は、前のマンションで、なんらかの異常を感じていたのではないか。
自分の住む部屋に、なんらかの曰くがあるのではないかと疑っていた。
だからこそ、新築物件にこだわっていたのではないか。
その彼自身が「曰く」そのものになってしまった。

怪談ではよく「祟る」「取り憑く」「呼ぶ」「招く」などと言われるが、その実体はわからない。
ただ、自殺者の霊が出る部屋にいた住人が、同じく自殺に至るという怪談がひとつの類型であることは確かだ。
自殺のあった部屋で自殺者が出る。
また、本人にはそのつもりもなかったのに、ふらふらと自殺しそうになる。
ただし、今回の彼の場合はこれには当たらない。
以前のマンションには、自殺者はいないし、ゆえに彼がそれを模倣することもありえない。

わたしは、幽霊も祟りも好きだけど、信じていない。
なのに、「縁起でもない」と言われると、ちょっとドキッとする。
「ついている」「ついてない」「縁がある」「縁がなかった」は、しばしば耳にする

マンション自体に瑕疵がなければ、土地柄?

マンション以前
マンションが建つ前、1989年の住宅地図では、此処には、三件の家があった。
それから間もなく、1989年までに一軒を残し、空き地になっている。
バブルの最中、不動産投資は加熱し、投機の対象になった。
その間、この地区に自殺などの事件はなかった。
住民は皆、自治会に入っており、子供を通して横のつながりもある程度あった。
一軒だけ残っていた小井戸家は、ゴミ屋敷だった。
奥さんが亡くなってから、その家の主人は引きこもりになり、ゴミも臭いもすごくて、周囲はずいぶん迷惑した。
小井戸氏は、そのゴミの中で死んでいた。
夏場のことで、文句を言いに行った近隣の住民が発見した。
病死であろう。

話は置いといて、いったいどのくらいの人が、自分の住む土地の来歴を知っているだろう。
賃貸物件の建つ前のことなど、考えたこともないはず。
持ち家もそう。
もともとあった建物を目にしていればともかく、最初に更地の状態で見たとき、以前はどんな建物が建ち、どんな人が住んでいて、またその前は、どうだったかなど、考える人はいないだろう。

私ごとだが、うちの実家は長いこと借家に住んでいた。
あるとき近所、国道の向こう、その当時は一面の田圃だったところに、県の住宅供給公社が宅地開発をすることになり、人のいい大家の勧めもあって、申し込み、抽選に当たり、入居した。
ところがそれから10年も経たないうちに、父が癌で死んだ。
我が家を挟んで、5軒の家に死者が出た。
みな、若かった。
ひとりは交通事故だった。
大家のおじさんは、この辺の地権者だった。
団地が出来る前、この広八丁の田んぼの中に、一箇所墓地があったと。
わたしも何度も、お化け遊びをしに、友だちと行ったものだ。
結構立派なもので、墓石がたくさんあった。
ところが、すべて壊し、まず大きなメインストリートが出来、それから碁盤の目のように、中くらいの道、細めの道を作っていくと、大家のおじさんでさえ、何処に墓地があったか、まったく見当もつかなくなったという。

そのことと、向こう三軒に死者が続いたことが関係があるのかどうかは、わからないが、たぶん偶然だろう。

話を戻します。
このマンションには、帯の擦れる音と、赤ん坊の泣き声の二つのおかしなことがあるということにある。
本書には、他にも納得のいかないおかしな現象が多々、納得のいく形で挙げてある。
此処では割愛しているだけである。

作者は、地上げ以前の、この辺りをよく知る、ゴミ屋敷の小井戸家を含む町内会の会長を探し当てている。
小井戸さんの死亡のことも、マンションの建設から入居、そして駐車場のいちばん奥に一軒だけ残っていた稲葉さんの家のことまで知っていた。
結局、稲葉さんもご主人の郷里に帰ることにした。
その引越しの前、町内会長は「ちょっと来て」と呼ばれた。
一部屋ずつ片付けては大掃除をしていく・・・この世代は律儀だ。
ところが、奥の座敷の畳を上げると、下から異様な染みが出てきた。
赤黒い染みで、赤というより褐色で、かなりの量だった。
もし血痕だとしたら、その前の人か、更にその前の住人のときか。
前の前の人の息子は失踪している。
30年も前のことだ。
おそらく、この染みは血痕ではない。
血液は非常に退色しやすいと。
光のささない場所でも、数週間から一ヶ月で消えてしまうものらしい。
その染みを拭きながら、稲葉氏が言った。「この部屋、誰かの足音がするんだよね。」「もう引越しちゃうからいいけどね」

かなり広大な敷地を分割して、マンションと数軒の一戸建てを建てたものと思われる。
かなり大きな家もあったと聞く。
時代は変わり、それぞれがそれぞれの事情を抱え、相続などでの分割も経ながら、現在に至っている。
稲葉氏の前に居た家は一年で引っ越し、稲葉氏は四年、その後長く空き家だったとか。
放置された後、取り壊された。
隣が政春邸。
ごく普通の家庭が、息子に嫁が来てから、様子が変わったとか。
新興宗教に凝って、よくお祓いをしていた。

そうこうしているうちに、不動産巡りの効果だろうか、マンションを出て、一戸建てに移った飯田氏の消息が知れた。
転居先の地方紙に、記事が見つかった。
附近の住民が、飯田家から火が出ているのをみつけた。玄関を入ったところで、妻が6歳になる子供を抱いて死んでいた。
二人とも、鋭利な刃物による刺し傷があり、それが死因だった。
二階の焼け跡から、首を吊った主人の章一さんが見つかった。
無理心中とされた。
ただ、動機は分からず、続報もない。

話は変わるが、日本でどの程度無理心中が起こっているか、判然としない。
警察庁の発表する統計には、無理心中に関する数字がない。
ただ家庭内の殺人は、殺人事件の中で最も多く、約4割を占める。
つまり我々は、見ず知らずの他人に殺される可能性より、家族に殺される可能性の方が高いということだ。
マスコミ的には、「殺人」ではなく「心中」という別現象になるらしい。
日本には、家族による無理心中を軽く扱う傾向があることは否めない。

いずれにしても、だんだんこの件から手を引きにくいものを感じ始めていた。

近隣に古い住人がいない場合、寺社を頼るのが一番だ。
住職や宮司、それに世話役は、ほぼその土地の古老だ。
檀家も多い。

ゴミ屋敷の小井戸さんの家は、政春さんという方の家の跡地に建っていた。
政春家が建ったのは、終戦直後。
政春家は、普通の勤め人だった。
この辺りでは、嫁入りの前に花嫁さんが近所に挨拶をして廻る習慣があったらしい。
母親は、朝には娘について、喜色満面で一緒に挨拶廻りをし、夜に首を吊った。
結婚相手は、近所の、駅向こうの呉服屋の息子だった。
ホテルや結婚式場で披露宴をやる時代ではなかった。
繁華街の大きな料亭で披露宴をやって、そこから娘を嫁ぎ先に送り出して、夫婦で家に戻った。
奥さんは、すうっと奥に引っ込んだ。
旦那は、着替えに行ったんだろうと思ったんだが、いつまで経っても出てこない。
それで、様子を見に行ったら、黒紋付のまま帯締めを鴨居に掛けて、首を吊っていたという。

この母親だ。間違いない。

娘の結婚相手は、それなりに繁盛していた呉服屋の跡取りで、いい縁談だねって、みんな言ってたと。おまけに実家の近くだし。

むかしは、家族の自殺を恥だと考える風習があった。
親父さんは、事件のすぐ後仕事を辞め、一周忌を済ませて出て行った。
家族から自殺者なんか出たら、堅い会社にはいられなかった。
( 2 ) に 続く

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