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「 累犯障害者 」 ( 4 )

口話による会話ができるよう、いくら読唇術を覚えたところで、限界がある。
「たばこ」と「たまご」、「すき」と「ぐち」、「ぱぱ」と「まま」
「いいました」と「ききました」などなど。
口の形だけでは区別できない言葉は、何百、何千と存在する。

にもかかわらず、強制的に発音練習を続けるろう学校
算数にしても、「 1+1 」の答えは、「 2 」ということより、
きちんと「 いちたすいちは に 」と発音できるかどうかが問題となる。

こうして、ほとんどの教科が、その分野の知識を高めるための授業ではなく
単なる発音練習の場と化してしまう。

なぜそこまでする必要があるのか。
口話さえできれば、聴者社会での就職が有利になるとの発想が、ろう学校側にあるからだ。

ろう学校には、「 9才の壁 」という言葉がある。
ろうあ者は、ろう学校の高等部を卒業しても、所詮、9才レベルの学力しか身につかないという意味らしい。

人間は皆、置かれた立場によって、常識というか身に付けるものがちがうし、変わってくるはずです。
ろうあ者と聴者の常識は、当然異なるものであるに違いないのです。
そもそもろうあ者に聴者の常識を押し付けること、はなはだ不遜ではなかろうか。

ろうあ者人口は限られている。
非常に狭い社会のなかで、濃い人間関係をつくって生きているろうあ者。
彼らには、犯罪の相手ですら、ろうあ者に限定されてしまうのか。

「 国立身体障害者リハビリテーションセンター学院・手話通訳者学科 」
木村晴美氏。この学院の教官であり、NHK「手話ニュース」のキャスター。
ろうあ者の話。
「 聴者がキャスターの時は『手話ニュース』はぜったい見ない。
ろうあ者には、何を言っているのかほとんど理解できないからです。
ニュースを見るのは、ろう者である木村晴美さんがキャスターをやってるときだけです」

木村氏「わたしの両親もろう者でしたから、当然家庭では手話を使っていました。
学校では、手話を使うと先生に怒られます。」

木村氏はたいへんな努力家で、完璧に近い発音で、口話を使うことができる生徒に授与される「川本口話賞」を受賞している。
「発音がいいからって褒められても、自分の声は聞こえてないんです。
どこが評価されているのか、当事者が分かっていないのです」
「一対一で話すときはなんとか理解できます。
それ以上は無理です。
先生が、下を向いて話したり、黒板に字を書きながら話すとぜんぜんわかりません。
学校では、相当なエネルギーを消耗し、疲れ果てて、高校時は100日は休みました。」

「聴者が使う、日本語対応手話は、頭の中で翻訳しながら見なくてはならないので、とても疲れる。
20分が限度です」

聴者は、彼らに口語や日本語対応手話を押し付けてきたが、それらはろうあ者にとって社会生活を送るうえで、有効ではなかった。
そのため知識を得る機会まで奪われ、「9才の壁」とやゆされるような人間にした。
木村氏と話せば、何処かの聾学校の校長が言った 「彼らには知識を得る能力がない」は、 まったくのデタラメであることがわかる。

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