たぶん5歳の頃、菊人形展なるものを見に連れて行かれた。
小菊を針金で誘引したのか仕立てたのか、とても大きな、張り出したものになっていて、香りも色も見事だった。
中に進むと、灯籠から顔の半分が潰れた女の首が恨めしそうに垂れ下がり、目はしっかりとこちらを睨みつけていた。
ろくろ首もいて、精いっぱいクビを伸ばして、あんどんの油を舐めていた。
これが何故菊人形展にあったのか、いまだに理解できないが、子供の私にはショッキングで、そのせいで、思い出深いものになった。
ただ誰と行ったのか、思い出せないでいる。
聞こうにも、みんなあちらの世界に行ってしまって、もう思い出を語る人のひとりもいなくなった。