胸 底 の 水 琴 窟 に 皐 月 雨

水琴窟
水琴窟 / Kentaro Ohno

わたしには心臓の奥に、涙の壺がある。
子どもの頃、理不尽なことでたびたびまま母から怒られ、叩かれ、ご飯を抜かれ、さまざまなことから形成されたものと思う。
大人になって、壺が溢れることはなくなったが、壺そのものはそのままそこにある。
ときおりどろりとした得体のしれない液体が流れ込む。
水琴窟がきれいな音を立てることはなくなったが、おさまらないものがある。