遠い昔 ふと思い出す 秋時雨

何の脈絡もないのに、雷が落ちたように、昔のこと、あゝあの人はあの時こんな気持ちだったのかなんて、ふと思うというか、気がつくことがある。私が五才、妹が三才の頃に両親は離婚した。親戚中からソッポむかれてた父は、幼い私たちを預けるところがなく、職場に連れて行ったものだ。今思うと、たかだか三十才。屋上や、ひと気のない会議室で時間がつぶれるわけもなく、わたしはまだ理解していたが、妹はわけがわからなかった。屋上から階段のしたに向かって、全身を振り絞るような大きな声で、[ トオチャアン、うんこ ]と言った。父は慌てて出てきた。わたしは五才だったけど、父が気の毒だった。

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