半 日 で 墓 地 は 更 地 に ち ち ろ 鳴 く

ほんとうの昔の墓地だった。
整列せず、大小様々で、大きな、小さな墓石が長い年月雨に打たれ、何がぶつかったか、石のあちこちが欠け、それでも盆や彼岸にはところどころ小さな花が供えてあるのを目にする、そんな墓地だった。
日当たりはよかった。
朝はそのままだった。
夕方の帰り道、びっくりした。
更地になっていた。
思わず、目をこすってしまった。
それからすぐに工事が始まり、あっという間に立派なマンションになった。
モデルルームは、少し離れた大きな道路沿いに出来、売約済みの札は、工事前であっても増えているよう。
この土地に何代にも渡って、墓があったことなど、他所者は知るよしもない。
墓地だから、どうというわけではないが、何も知らされずに、新しい生活を始めるのだろう。
新しい家具を買い、カーテンも奮発して。
この前、小野不由美作 「残穢」というホラー小説を読んだばかりだから、よそ様のことながら、なんか気になってしまう。

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