蛸 壺 の 傾 き 覗 く 梅 雨 の 月

たこつぼの かたむきのぞく つゆのつき

今はどんなものが使われているのか知らない。
もしかしたらプラスチック製かも。
むかしの蛸壺は焼き物で、それは重かった。
漁師さんたちは、さぞかし大変だっただろうと想像するけれど、その、焼き物であるがため、ひとつひとつが微妙に違っていて、わたしがもらった蛸壺は、廃品だからという理由だったけれど、かなり傾いていた。
傾いているからといって、それなりに自立して、ちゃんと立っていた。
まわりにはフジツボが、ぐるりとくっついていて、長い年月と風化を感じさせる、見ようによっては、逸品。
梅雨の、気のせいか遠慮がちな月がその傾きにわずかな光をそそぐ。