「 累 犯 障 害 者 」 ( 1 ) 山本譲司 新潮社

2006年1月7日未明、JR下関駅が炎に包まれた。
木造二階建ての駅舎は20メートルにも及ぶ火柱が立ち、消防車24台の懸命の消火活動もむなしく完全に燃え落ちた。
幸いなことに未明の火事のため死傷者は出なかった。
本州と九州を結ぶターミナル駅の焼失は、交通機関をまひさせた。

新聞各紙はこぞって、ひとりの男を糾弾した。
福田九右衛門 74歳。
8日前まで刑務所に服役していた。
12月30日福岡刑務所を出所、その後一週間北九州市内の自転車置き場などで野宿生活を続けていたらしい。
「刑務所に戻りたかった」

刑務所について
一般受刑者たちに、「塀の中の掃き溜め」と呼ばれているところがある。
そこは、精神障害者、知的障害者、認知症老人、聴覚障害者、視覚障害者、肢体不自由者など、一般懲役工場での作業はとてもこなせない受刑者たちを隔離しておく「 寮内工場 」と呼ばれる場所。
この寮内工場で、名目は指導補助、実態は介護。
失禁者が後を絶たず、受刑者仲間の下の世話に追われる毎日。
障害のある受刑者が、医療刑務所ではなく、一般刑務所に数多く入所しているのが現実らしい。

刑務官たちも、彼ら障害のある受刑者たちの処遇に苦慮していた。
「 福祉の方でなんとか支えられないのか。
刑務所に押し付けられても困るんだが 」

「 俺たち障害者はね、生まれたときから 罰を受けてるようなもんなんよ。
だから罰を受ける 場所はどこだっていいんだ。
どうせ帰るとこもないし・・・。
刑務所の中だっていいや 」
「今まで生きてきて、ここがいちばん暮らしやすいんだよ」

彼らは「 触法障害者 」と呼ばれる。
いったいどういう経緯で、法を犯すことになってしまったのか。

下関駅放火事件の福田もまた障害者だった。
過去10回にわたり刑務所に服役していた。
すべてが「 放火罪 」

収容先は、一般刑務所だけでなく、北九州医療刑務所や岡崎医療刑務所 のこともあった。
これらは、一般刑務所での処遇が困難となった、精神障害や知的障害のある受刑者が服役する。
福田は、「精神遅滞あり」とされている。

軽度知的障害者というのは、人から言われれば身のまわりのことはある程度こなせる。
しかし、自分で考え、自分で進んで取りかかるということは、なかなか難しい。
物事の善し悪しも、どれほど理解しているかわからない。

法務省が毎年発行している 『矯正統計年報』に、「新受刑者の知能指数」という項目がある。

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